初めてリストカットをしたのが12歳

高校生だったお姉ちゃんが「つらい時はこうすると楽になるんだよ」って言ってた

お姉ちゃんの腕の中にはいつも赤く滲んだ線があって、男の名前とかも彫ってあった

初めては興味本位で切った

その時のことを今でも覚えている

家庭科の授業中針みたいなもので線をつけた

心が楽になってしまった

お姉ちゃんと一緒になれた気がした 

そこから、ひとりぼっちじゃないよと自分におまじないをかけるように、お姉ちゃんと同じことをした

学校で辛いことがあった時、お母さんと言い合いになった時、お姉ちゃんと同じ場所に同じように自傷した

お姉ちゃんと2人ですることもあった

誰かに見せるわけじゃないけど、自分で自分を慰めるようにお互いを慰めるように お姉ちゃんとはなだけ、2人ぼっち 

お母さんお父さんには分かってもらえない苦しみを、傷ついた証拠を残したかったのだと思う

12歳のわたしは思ってもいないでしょ まだ苦しいままなんて 12歳のあの日、今日のことなんてどうせみんな忘れてると思ってたでしょ 8年経っても覚えてるよ はなが傷ついてたことは私がちゃんと覚えているよ

わたしが壊れないとお母さんははなに頑張ったねって言ってくれないと思ってた だからたくさんリストカットした

当時は、この傷はあの出来事で、これはあの時のことって全部覚えてた

もう頑張らなくていいよって言葉をもらうために、必死で傷を付けていたけどあまり意味はなかったね

その言葉をもらえたのは何年後だったか 

その頃には、リストカットじゃとどまらなくなっていた

お母さんが言ってくれなきゃ、はな自分のこと何も決められないから、それは簡単になくなるものではないから

だからこれから先もずっと、お母さんのために生きてく 親子の呪いは永遠なんだろな

気づいたら傷は腕にいっぱいになってて、左腕は日記みたいになった

本当の自分を忘れないために、虚像の自分に押し殺されないためにつけた傷も、親不孝な自分への戒めの傷もたくさんあった 腕を切れば許されるとさえ思ってた

お姉ちゃんとお揃いのリストカットの痕が手首の一番上にまだ白く残っている 12歳の私がまだそこで泣いているような気さえする まだ癒えてなかったんだろう だけどそれを見ると、ひとりじゃないって安心する